◆教員の多忙解消へ一歩
教員の多忙化の解消策として、学校の部活動の改善を求める声が上がっている。休養日の設定や、教員以外が指導する体制の検討が各地で進む。変わりつつある部活動の今を、3回に分けて探る。
日も陰り始めた十月末の午後四時前、三重県桑名市明正(めいせい)中の校庭でサッカー部の副将、鹿内大椰(しかうちはるや)君(二年)が、自分たちで考え、チーム全体で意識する項目を読み上げた。日数が減った練習の密度を濃くしようという思いを込めて。
同市の中学は四月から、すべての部活で週二日の休養日を設けている。明正中は毎週月曜、全部活が休みで、土日はどちらか一日、必ず休む。
休養日の設定は、教員の多忙解消が目的の一つだ。文部科学省が昨年行った教員勤務実態調査では、中学教諭の約六割が週六十時間以上働いていた。過労死の労災認定の水準を超える労働時間だ。87・5%の学校で、教員全員が部活の顧問を担当する。顧問は十分な手当てがないまま、安全管理の責任などを負う。
桑名市は「生徒の心身に過度に負担をかける実態」なども考えて、昨年十一月、「部活動ガイドライン」を策定。休養日も盛り込んだ。
策定では、中学で二〇二一年度に始まる新学習指導要領も考慮した。生徒が話し合いなどを通して主体的に学ぶ授業が求められるようになるため、その準備に教員は時間が必要になる。「教員の部活の負担を減らし、授業準備の時間を確保したい。生徒には活動時間が減る中で効率よく力を伸ばす方法を考えてもらいたい」と教員経験者の市教育委員会指導課、谷岡伸悟主幹(52)は話す。
現場の反応はどうか。明正中サッカー部顧問の清水俊介教諭(33)は「負担が少し軽くなった。以前は休みが週に一日あるかどうかで、部活指導後の午後六時から職員会議をすることもあった」と話す。半面、練習試合が減り、複雑な気持ちも残る。主将の山門哉都(かなと)君(二年)は「去年と状況は違うけど、もっとうまくなりたいし、勝ちたい」と本音を打ち明け、「限られた中で頑張る」と前を向く。
◆定着の難しさ 浮き彫り
文科省とスポーツ庁は一月、部活動の休養日を設けるよう全国の教育委員会に通知。休養日の設定は、各地で進んでいる。岐阜県は昨年六月、中学の運動部で週二日、愛知県も今年三月、中学で週二日以上設ける指針をそれぞれ定めた。
三重県は県全体の指針を策定中。九月に開かれた策定のための初会合では、委員から、部活に負担を感じる教員がいる一方で、やりがいを感じる教員もいるとの発言があった。今月示された、中学で週二日休養日を設ける案には、委員の校長や団体関係者らから否定的な意見が相次ぎ、納得のいく結論を導く難しさが浮き彫りになった。
休養日が定着するか疑問の声もある。早稲田大スポーツ科学学術院の中沢篤史准教授は、二十年前にも文部省(当時)が中学の部活の休養日を週二日以上とする指針を出しながら定着しなかった経緯があるとし、「教員の負担が社会に認識され、状況が変わる期待感もあるが、『先生は部活をやって当然』という世論は根強い。すんなり解決すると考えるのは早計では」と話す。指針に強制力はない。朝の練習を禁止にした地域で、朝練を「自主練」扱いにして“規制”を逃れる例もあるという。
そんな中、静岡市は九月、部活の上限を週四日とする踏み込んだ指針案を提示。一九年八月の完全実施に向け、意見を募った。「『量から質への転換はいいこと』など、好意的な意見が多かった」と高井絢・教育局次長。市内の半数以上の中学で既に、部活動が週三日休みとなる申し合わせをしている。市教委は、週三日休む運動部の成績が、休んでいない運動部より劣ってはいないとし「競技力を犠牲にする指針ではない」とする。
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