職員会議を効率化/部活動見直し…
教員の長時間労働が問題になる中、「働き方改革」の取り組みが各地で始まっている。中には成果が出始めたケースも。一方で、教員に時間外手当の支給を認めていない教職員給与特別措置法(給特法)が「無制限の時間外労働の原因になっている」として、同法改正による抜本的な改革を求める意見も現場の教員から出ている。
「時間を大切にする意識が高まり、教員の在校時間を減らせた。子どもたちに、よりきめこまやかな指導ができるよう、保護者、地域の理解を得ながら、さらに取り組みを進めたい」。愛知県豊橋市の豊小学校の金子明子校長は話す。
同校は、県の働き方改革の実践校の一つ。昨秋以降、職員会議の効率化などの改革を、職員同士が話し合い、実施した。その過程で、「時間を有効に使う視点」が養われた。同小では一昨年十一月、過労死ラインとされる「月八十時間」を超えた超過勤務をしていた教員は二十二人中七人いたが、昨年同月の調査では二十三人中四人に減った。四月以降、保護者の理解を得られれば、家庭訪問を自宅の確認だけにするとか、効果を損なわない形で学校行事の在り方を見直すなどの改革を進めたいという。
一昨年、文部科学省が行った全国調査で過労死ラインを超えていた教諭は小学校で33・5%、中学校で57・7%。教諭の一週間の勤務時間は、その十年前の調査より小学校で約四時間、中学校で約五時間増加。小学校では授業とその準備、中学校では部活動指導の時間がそれぞれ増えた。
同省は昨年末、学校での働き方改革の「緊急対策」を公表。授業の準備を手伝う「スクール・サポート・スタッフ」や部活動の外部指導員の活用を促し、二〇一八年度からその人件費の一部を国が負担する。
愛知県岡崎市が中学校の朝の部活動を四月から原則廃止する方針を校長会で確認するなど、部活動の見直しも進む。名古屋市は小学校の部活動を二〇年度で廃止する方針だ。
保護者らの対応でも工夫が。岐阜市内の小中学校は二月から、夜間と休日の電話応対を取りやめ、電話では音声で市教育委員会の専用電話番号を案内。静岡県でもモデルの小中学校数校で夜間、電話を市教委などに転送する仕組みを一六、一七年度に試行。県教委は混乱がなかったと確認しており、各地での取り組みの参考にしてほしいという。
◆「給特法」で教員の残業代ゼロ 法改正求める声も
各地で改革が進むだけでは不十分で、教員の働き方の根本にある「給特法」を改正すべきだとの指摘がある。
公立学校の教員は、残業をいくらしても残業代は支払われず、本給の4%が「教職調整額」として毎月一律で支給される。四十七年前につくられた給特法が、そう定めているからだ。4%の数字は法制定前の勤務時間調査に基づいている。
ところが、社会の学校への要求は年々肥大化。教員の残業時間は法制定当時の十倍前後に増えている。しかも、部活動の顧問など実質、強制的に割り振られる仕事を含め、多くの超過勤務は「教員が自主的にしている仕事」と扱われる。給特法で、教員は「職員会議」などの四項目を除き、時間外勤務を命じられないことになっているからだ。自主的という建前に加え、残業代というコストもかからないので、管理職が教員の勤務時間を正確につかむ必要に迫られず、長時間労働の歯止めが利きにくい。
そうした状況を問題だと考える中部地方の教員、斉藤ひでみさん(仮名)は、インターネットの署名サイト「change.org」で、「教員の残業代ゼロ法『給特法』を改正してください!」として署名を呼び掛けている。
斉藤さんは、教員にも一般の労働者並みに残業時間の上限を定めるべきだと指摘。部活動顧問は本来の業務でないと明記し、やらざるを得ない残業には残業代を支払うよう改正を提案している。「長時間労働に歯止めをかける法改正をすれば、教育の質の向上につながる」と訴える。
現在、教員の働き方改革を議論している中教審でも、複数の委員から給特法を大幅に見直すべきだとの意見が出ている。
(佐橋大)
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