2018年2月10日土曜日

中日春秋(朝刊コラム)2018年2月10日

 <なぜ、しま模様のある動物がこれほど多いのか?><なぜライオンには、たてがみがあるのか?>。これらはいずれも、英国の名門オックスフォード大学の生物学の入試問題だ
▼この大学は入学試験で一万人の受験生一人一人を複数の教官で面接し、適性を丁寧に見極めるそうだが、その口頭試問で出される問題が実にユニークなのだ
▼たとえば法学の問題は<駐車違反の罰を死刑にしたら誰も違反しないようになった。そのような法は、公正、有効といえるか?>。歴史学では<歴史上の人物にインタビューできるとしたら、最も話を聞きたいのは誰か? また、その理由は?>
▼丸のみしただけの知識は役に立たず、何が問題なのかを根本から筋道を立てて考え、そうして得た答えを、自ら批判的に検証する力も問われる。ある卒業生は自分の体験をこう話してくれた
▼「正解できるかどうかが問われるのではないのです。誰も<これが正解だ>と断言できぬような問題ばかりですから。教官たちとやりとりを重ねるうちに、自分の当初の考えに間違いがあると思ったら、なぜ誤ったかを、きちんと分析する。そんな姿勢が評価されるのです」
▼破綻があらわになっても、ひたすら「国策」を推し進める官庁。書類を改ざんしてまで過ちを隠す一流企業…。「無謬(むびゅう)病」が蔓延(まんえん)するこの国に必要なのは、こういう入試かもしれぬ。

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