2017年11月26日日曜日

<変わる部活動> (中)外部指導員の制度化

◆質高め、教員の負担軽減

 学校が休みの土曜日、愛知県犬山市の東部中学校のテニスコートでは、ソフトテニス部の部員が二人の大人から指導を受けていた。一人は、顧問で体育教師の夫馬大輔教諭(28)。もう一人は会社員で、市から指導を委託されている近藤洋司さん(52)だ。近藤さんは、趣味で軟式テニスをする傍ら、部活動のコーチを務める。「私は後衛、近藤コーチは前衛が専門。それぞれ違う視点で指導できる」と夫馬教諭は話す。
 同じころ、教室で吹奏楽部が練習をしていた。顧問に加えて、NPO法人から派遣された二人の指導者が、生徒たちにサックスとフルートを指導していた。顧問を務める国語科の乾健太郎教諭(28)は高校で吹奏楽部の経験がある。乾教諭は「外部の指導者によって、自分が取り組んできた楽器以外の指導法が教員にとっても勉強になる」と話す。
 同市では、中学の運動系の部活で十六年前、吹奏楽部では十五年前に、教育委員会が中学に外部の指導者を派遣する制度を導入した。顧問が得意でない競技や楽器を教えるのに、学校外の力を借りようと始まった。市内には中学が四校あり、運動部の指導者は四十人。一人が一カ月三回程度指導し、市は一時間あたり二千円を支払っている。吹奏楽の指導者派遣は年間に延べ約百五十人。ただし、指導者は「顧問の補助」の位置付けで、単独で試合などの引率はできない。
 日本中学校体育連盟によると、全国で約三万人が中学の外部指導者として登録している。ほとんどが犬山市と同じ位置付けで、活動に対し無報酬の自治体もある。
 ここ数年、教員の多忙化が指摘され、部活がその要因の一つとされている。文部科学省が四月に公表した教員勤務実態調査では、中学の教員の土日の勤務時間のうち、部活に費やす時間は一日平均二時間十分。十年前からほぼ倍増した。増加要因の中で突出している。


 こうした状況を受けて、文科省は動き始めた。三月、一般的な外部指導者より一歩踏み込み、顧問も務められて、試合などの引率もできる外部の指導者を「部活動指導員」として制度化した。その上で、同省は八月、二〇一八年度予算の概算要求に、「部活動指導員」の費用十五億円を盛り込んだ。市町村が指導員を非常勤職員として任用し、その費用の三分の一を国が補助する。
 同省は、文化系も含め、初年度は約七千百人の配置を想定。四年計画で予算を拡充し、二一年度に約六十億円を補助して一校あたり三人の配置を目指す。熱心すぎる外部人材が顧問になって、部活が過熱することを防ぐため、休養日の設定などの「部活動の適正化」をする自治体に補助先を限定する。
      ◇
 県で予算を付けた山梨県内の自治体など、すでに部活動指導員を配置した市町村もあるが、多くの市町村は来年度の国の予算化を待っている。各市町村教委は、条件を満たすように、休養日を盛り込んだ部活動ガイドラインを定めるなど、準備を進めている。犬山市も、文科省の部活動指導員の導入に向け準備中。部活により深く関わる外部の人材により、教員の負担を減らし、指導の質もさらに高めたいという。
 名古屋市は、一般的な外部指導者に加え、〇四年から、教師と同様に生徒の引率もできる非常勤職員「外部顧問」を中学に派遣。文科省の部活動指導員を先取りする。
 現在、文化系を含め、小学校の十三の部活、中学の百六十一の部に外部顧問と教員の顧問がいる。教員の異動の都合で部が廃止になるのを防ぐ制度だが、教員の負担軽減策の色合いも濃くなっている。市教委によると「教員が不慣れな競技などの指導を一人で抱え込まなくてもよくなった。精神的な負担が減った」など、おおむね好評といい、顧問派遣の要請は増えている。最近では、外部人材の確保が新たな課題になりつつあるという。
 予算と人材の確保が必要だ。

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