2018年2月16日金曜日
2018年2月12日月曜日
奨学金破産、過去5年で1万5千人 親子連鎖広がる
奨学金破産
国の奨学金を返せず自己破産するケースが、借りた本人だけでなく親族にも広がっている。過去5年間の自己破産は延べ1万5千人で、半分近くが親や親戚ら保証人だった。奨学金制度を担う日本学生支援機構などが初めて朝日新聞に明らかにした。無担保・無審査で借りた奨学金が重荷となり、破産の連鎖を招いている。
機構は2004年度に日本育英会から改組した独立行政法人で、大学などへの進学時に奨学金を貸与する。担保や審査はなく、卒業から20年以内に分割で返す。借りる人は連帯保証人(父母のどちらか)と保証人(4親等以内)を立てる「人的保証」か、保証機関に保証料を払う「機関保証」を選ぶ。機関保証の場合、保証料が奨学金から差し引かれる。16年度末現在、410万人が返している。
機構などによると、奨学金にからむ自己破産は16年度までの5年間で延べ1万5338人。内訳は本人が8108人(うち保証機関分が475人)で、連帯保証人と保証人が計7230人だった。国内の自己破産が減る中、奨学金関連は3千人前後が続いており、16年度は最多の3451人と5年前より13%増えた。
ただ、機構は、1人で大学と大学院で借りた場合などに「2人」と数えている。機構は「システム上、重複を除いた実人数は出せないが、8割ほどではないか」とみている。破産理由は「立ち入って調査できず分からない」という。
自己破産は、借金を返せる見込みがないと裁判所に認められれば返済を免れる手続き。その代わりに財産を処分され、住所・氏名が官報に載る。一定期間の借り入れが制限されるなどの不利益もある。
奨学金にからむ自己破産の背景には、学費の値上がりや非正規雇用の広がりに加え、機構が回収を強めた影響もある。本人らに返還を促すよう裁判所に申し立てた件数は、この5年間で約4万5千件。16年度は9106件と機構が発足した04年度の44倍になった。給与の差し押さえなど強制執行に至ったのは16年度に387件。04年度は1件だった。
奨学金をめぐっては、返還に苦しむ若者が続出したため、機構は14年度、延滞金の利率を10%から5%に下げる▽年収300万円以下の人に返還を猶予する制度の利用期間を5年から10年に延ばす、などの対策を採った。だが、その後も自己破産は後を絶たない。
猶予制度の利用者は16年度末で延べ10万人。その期限が切れ始める19年春以降、返還に困る人が続出する可能性がある。(諸永裕司、阿部峻介)
◇
〈国の奨学金制度〉 1943年に始まり、現在は日本学生支援機構が憲法26条「教育の機会均等」の理念の下で運営している。2016年度の利用者は131万人で、大学・短大生では2・6人に1人。貸与額は約1兆円。成績と収入の要件があり、1人あたりの平均は無利子(50万人)が237万円、要件の緩やかな有利子(81万人)が343万円。給付型奨学金は17年度から始まり、新年度以降、毎年2万人規模になる。
高校生向けの奨学金事業は05年度に都道府県に移管されており、全額が無利子の貸与となっている。大学生向けで給付型を採り入れている自治体もある。
2018年2月11日日曜日
増える非正規の常勤講師 公立の小中学校
公立の小中学校で、非正規教員として任用される「常勤講師」が増えている。教員免許を持っており、担任や部活動顧問など正規教員と同じ仕事を担うが、給与面などの処遇が低く、不安定な身分で働いているのが現状だ。中部9県をみてみると、国が定める教員定数に占める割合が全国平均を大幅に超える県もある。
◆忙しさ正規教員並み…でも低い処遇
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三重県の教員定数に占める常勤講師の割合を見つつ、自身の講師経験を話す男性=同県内で
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「中学校は本当に大変。二年しか続かなかった」。五十代前半の女性は四十代後半のとき、三重県内の公立中学校で常勤講師を務めた。県立高校では約二十年間、常勤などで勤務してきたが中学校は初めて。授業をしながら三年生の副担任をもち、入試の願書の書き方も指導した。
運動部の顧問として土日は生徒を試合に連れて行くこともあった。終わると学校に残ってテストを採点したり、二百冊ものノートを確認したり。平日は職員会議などで帰宅時間は午後九時ごろになった。幼子を抱え、夜中に翌日の晩ごはんを準備する日々を送った。
まさに「多忙」とされる正規教員と同じ。でも給与は月額二十万円台前半と、同年代の正規より大幅に少なかった。「仕事内容は変わらないのに、差があるのは腹立たしい。忙しすぎて教員採用試験の勉強の時間も取れない」と明かす。
常勤講師の任用は本来、緊急時などに限られ、期間は地方公務員法で一年以内とされる。ただ、実際は教育委員会が年度末に一度解雇して一~数日間の「空白期間」を設け、翌年度に再び任用するケースが多い。
空白があると期末勤勉手当が減額されるなど不利益を被る。給与も正規より低く抑えられている上、日本教職員組合によると、十~十五年勤務すると三十万円前後で頭打ちになる自治体が多い。そもそも、次年度も職があるかが分かるのは早くて二月末以降。雇用は安定しているとは言えない。
同県の公立小学校などで常勤講師を十年間務める男性は「来年度も仕事があるか、二月の終わりごろから携帯への連絡を待ち始める。毎年すごいストレス」。一緒に過ごす中で児童らの特徴が分かり、「こんな教育をしてあげたい」と思っても、次年度があるか不明なままでは腰を据えて取り組むのも難しい。「子どものためにも一年で学校をかわる常勤講師は多くない方が良い。正規教員をもっと採るべきだ」と強調する。
文部科学省の調べでは、公立小中学校の教員定数に占める常勤講師の割合は二〇一七年五月一日現在、全国で7・4%。人数は四万二千七百九十二人で、〇一年の約一・八倍に上る。都道府県別では沖縄(15・7%)が最も高く、中部地方は三重(12%)が五番目、長野(10%)が七番目の高さ=表。定数を正規教員で満たしているのは東京のみだった。
三重県教委の担当者は割合が高い理由について「〇五~一〇年に公務員数を減らす動きがあった。同時に、将来の児童生徒数は減る予測がなされ、正規教員の採用数を控えたため」と説明。一一年採用分からは正規採用を百人程度増やし、「改善している途中」と話す。
「臨時教職員制度の改善を求める全国連絡会」会長で、日本福祉大の山口正教授(教育行政)は「〇一年度以後、特に小中学校で非正規教員の増加が著しい。その背景としては、義務教育国庫負担制度の見直しや自治体の厳しい財政事情が影響している」と説明する。
非正規は正規と同様の職務と責任を担うが処遇に格差があるとした上で、山口教授は「非正規教員の勤務条件の改善は、安定的な教育や教員全体の多忙化解消にもつながる喫緊の課題」と指摘。昨年に改正地方公務員法(二〇年施行)が成立し、「今後は非正規公務員の処遇改善が問われていく。自治体には職務に見合った非正規任用制度の改善が、国には自治体で処遇を改善し正規に転換できる財政的保障が求められる」と話した。
2018年2月11日 中日朝刊
2018年2月10日土曜日
<大学考 2018年問題> 地方国立大の地域貢献
十八歳人口の減少への危機感は、地方の大学ほど強い。もともと人口が少なく、受験生の都市部への流出も激しいからだ。地方の多くの国立大は地域との連携を生き残り策として重視し、地域の発展や研究の広がりが期待されるが、従来の研究との両立など課題もある。
一月下旬、小雪がちらつく三重県伊賀市のホテルに、大学教員や企業関係者ら約百人が集まった。地元企業との共同研究を進めるために三重大が開いたセミナー。「イノベーションを起こすことが社会的に期待されている。ぜひ三重大の先生方を使って」。鶴岡信治副学長(63)が呼び掛けた。
三重県は大学進学時の流入・流出率がマイナス30・2%で、中部九県で最も低い。三重大は、伊賀や東紀州など地域ごとに拠点を設け、地元企業との共同研究を進め、中学や高校の教育にも協力。取り組みを地元の高校などでもPRし、受験生獲得につなげたい考えだ。
県内中小企業との共同研究は五十九件で全国三位。「共同研究を増やして、地元企業の技術レベルを上げたい。県内産業が活性化し、学生が地元で働きたいと思わないと、県外流出は止まらない。長期戦だ」と鶴岡副学長。卒業生の地元就職率は現在32・9%。二〇一九年度の目標は43%だ。
大学教育ジャーナリストの木村誠さん(73)は「国立大の使命はもともと教育と研究だったが、最近は六割以上の国立大で地域貢献も掲げるようになった」と話す。国は五年前から大学を拠点に地方創生を促す事業を始め、計約百七十七億円を支援している。
富山大は、地元進学率や卒業時の県内定着率を上げるため地域リーダーの育成に取り組む。今春、土木系の人材を求める地元の声も踏まえ、都市デザイン学部を新設する。神川康子副学長(65)は「地方の大学にとって研究は重要だが、研究だけでは生き残れない。地域や社会に貢献する研究を心掛け、学生には地域の課題に取り組む中で力を付け社会に出てほしい」と話す。
岐阜大は一九年度入学者向けから、教育学部で新たな推薦入試「ぎふ清流入試」を始める。面接などで卒業後に県内の教育現場で働く意志があるかを確認。地域に根差した教員の養成と確保を目指す。
ただ、〇四年の独立行政法人化以降、国立大の経営は、その根幹を支える国の運営費交付金が十三年間で約千四百億円減らされるなど厳しい。現場からは、地域と連携する重要性を理解しつつ、困惑する声も聞こえる。企業の受託研究を手掛ける国立大准教授は「企業から研究費をもらえ、ありがたい。研究が広がるチャンスもあり、企業からの相談は断らないようにしているが、自分の研究は犠牲になっているかも」と苦笑。「企業からの相談や実験が増えて本来の研究の時間が減った」と明かす国立大教授もいる。
別の教授は「運営費交付金が減り教員一人あたりの研究・教育費は二十年前の半分以下。教員の数も減る中で、研究レベルも維持しながら、地域貢献も入試改革も求められる。われわれはスーパーマンではない。大学側もうまく現場を管理できていない」と憤る。
和歌山大の前学長で国立大学協会の山本健慈専務理事(69)は「産学連携はかなり成熟してきたが、国立大の地域貢献は大学側のマネジメントや教員の意識も含め、まだ発展途上。地域のさまざまな課題を察知する教員や、大学の研究内容に精通する行政マンなど双方をつなげる人材も必要だ。地域と連携した良い研究や教育ができれば学生も集まり、地域に愛着を持つ若者が育ち、流出阻止につながる」と期待を込めた。
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